- Zenkyo
「お坊さま」とは
今朝方、出先で車に向かって歩いていたら
見ず知らずの御婦人に
「お坊さま、こんな時分に恐れ入りますが、お衣を触らせて下さいませんか?」
と言われたので事情を伺うとお孫さんが難病で入院中との事でした。
正直に言うと、まだ法衣に触れて功徳を頂くという信仰が残っているのかと驚いたのですが
ご迷惑でなければと数珠を差し上げたら涙ながらに大切に仕舞われた。
私たち僧侶というのは宗派や教義
拝む対象や社会的な立場や役割に囚われがちだけれども
ただそこに「僧」がいるという事実だけで人々に安心を与える事も出来るのではないか。
総本山での修行中に
「寒い日、焚き火に人が集まるようにそこにいるだけで人が集まり、人に安心を与えられる、そんな僧侶に私はなりたい」
とお話下さった老僧を思い出した。
それと同時に御婦人が認識している「お坊さま」と
実際の私はいかほど違うものであろうかと恥じた。
ただ「僧」がいてくれれば良いと言われる事の尊さと、それに甘んじぬ求道の心
この両輪が真っ直ぐと御仏に向かっていく事こそが
月並みの表現ではあるが「三宝のありがたさ」なのではないだろうか。
私は「理由なき修行、布施なき経」を実践し、当たり前に僧でありたい。